お正月料理といえばおせちとお雑煮が王道ですが、中でもお雑煮はその土地土地の特徴が色濃く出る料理です。特に、お雑煮の、汁、餅の形、具によって日本中様々なスタイルがあるんですよ。
代表的なものでいえば、関東は鰹出汁のすまし汁に焼いた角餅、具は鶏肉や小松菜、人参、大根など。一方関西、特に京都では昆布出汁の白味噌仕立てが中心で、茹でた丸餅に具は里芋を入れるのが特徴です。
しかし時代の変化や結婚、転勤などによる人の流動でお雑煮も多様化し、関西であってもすまし仕立てで作る家が増えています。
ここでは関西風すまし仕立てのお雑煮の特徴と作り方をご紹介します。
昆布と鰹節の出汁で薄味に
昔ながらの関西風雑煮は、茹でた餅と里芋の両方のとろみが絡んでもったりするせいか、最近の若い人にはやや不人気のようです。
また白味噌のお雑煮は元旦だけいただくもので、2日目3日目はすまし仕立てが正式とも言われています。食べやすく飽きのこない、それでいて関西らしさのあるすまし仕立てのお雑煮。
汁、餅、具、それぞれのポイントを見ていきましょう。
1.まず、お汁
関西風味付けで思い浮かぶのが薄味。
薄味というと塩味や甘味の味付けが薄いぼんやりした味なのでは?と誤解されがちですがそうではありません。
味付けに使う醤油は関東では色の濃い濃口醤油使うため、汁や仕上がりはどうしても濃い茶色になります。
それに対し関西は色の薄い薄口醤油を使うことで薄い色に仕上がります。
そうした見た目から関西は薄味と思われているようです。
ところが実際の塩分量を調べると、濃口醤油が塩分16%に対して薄口醤油は18%とやや高め。
実は薄口は濃口に対して塩を1割ほど多く使っているのです。
味というのは醤油の塩加減だけで決まるものではありません。
そこには旨味という大切な成分が必要です。
極端なことをいえば、十分な旨味があればお醤油は香りづけ程度に使うだけでも十分おいしく感じることもあります。
その代表的なものがすまし汁です。
昆布や鰹節、あるいは椎茸で丁寧にとった出汁はふくよかな旨味があり、同時に香りも際立ちます。
日頃は顆粒ダシや麺つゆで済ますご家庭も、お正月はきちんと昆布や鰹節で出汁をとってみると、立ちのぼる華やかな香りで新年らしさが演出できます。
関西では上品な昆布出汁がよく使われますが、鰹節も加える方が旨味に深みが加わり、香りも立ちます。
ではお雑煮用の出汁のとり方と、すまし汁の味付けをご紹介しましょう。
2.つくり方
《材料 4人分》
・水 1リットル
・昆布 10㎝角
・花がつお 一掴み (約30g)
・薄口醤油 大さじ1
・塩 少々
・酒 みりん 小さじ1
①鍋に水と布巾などで表面の汚れをとった昆
布を入れ、弱火にかける。
②沸騰直前で昆布を取り出し、花かつおを入
れる。
1〜2分煮立てたら火を止め、自然に鍋底に
沈むのを待つ。
③沈み切ったら布巾かキッチンペーパーで漉
す。
➃とれた出汁に調味料を加えて味を整える。
少し手間がかかりますが、具材の色が映えるきれいに澄んだすまし汁の出来上がりです。
3.具は関西らしさと彩りを考えて
透明なすまし仕立ては、お椀に盛り付けたとき中身がはっきり見えるので、具材の色合いにも気を配りたいところです。
具は鶏もも肉、大根、人参、かまぼこあたりがポピュラーですが、関西風を意識するなら頭芋または里芋を使います。
頭芋の親芋で《人の頭になるように》という意味が込められています。
また関東では緑のものに小松菜を使いますが、関西では結び三つ葉がよく使われます。
結び三つ葉は茹でた三つ葉を2本ほどまとめて輪を作り結んだもので、おめでたい縁結びの意味も込められています。
人参は色が濃く鮮やかな金時人参を使うと一層華やかになります。
いずれの具も別の鍋で下茹で、下煮しておくのがポイントです。
具も餅も全部一緒にすまし汁の中でグツグツ煮てしまったのでは、せっかくのおすましが濁ってしまいます。
そして一手間かかりますが、下煮した具は食べる直前にすまし汁でさっと温めて、別に茹でた餅とともに椀に入れ、汁を張ります。
最後に柚子の皮を乗せれば上品な関西風雑煮の完成です。
なぜ関西は丸餅で関東は角餅なの?
餅は関西では茹でた丸餅ですが、なぜ丸餅なのでしょう?
実はお雑煮は京都の公家から生まれたもので、神事の供え物として作った丸い餅を高級料理として食べたのが始まりです。
江戸時代以降、関東の武士たちにも広まっていきましたが、武士は《敵をのす》という語呂合わせで平たいのし餅を切った角餅を使うようになりました。
以来、関西は丸餅のまま、関東は角餅というふうに分かれていきました。
その境界線が関ヶ原というところが、天下分け目の餅合戦みたいで面白いですが、今ではスーパーに普通に両方売っています。
関西のお雑煮のおすまし風・まとめ
全国にはその地域で受け継がれてきた個性豊かなお雑煮がたくさんあります。
そうした中で関西風のすまし仕立てのお雑煮は、具のアレンジ次第でいかようにも楽しめるスタンダードお雑煮といえます。
しっかり出汁をとることであっさりした中にもふくよかな味わいが楽しめるすまし汁の作り方は、覚えておいて損はないでしょう。
でもどうしても出汁をとるのは大変、お料理が苦手という方は市販の白だしを使ってみるのも一つの方法です。
色の濃い麺つゆと比べこくはあっさり目ですが、出汁が効いていることと色が薄いことで関西風のすまし汁に近づけられます。
香りという意味で物足りなければ、盛り付けの際に糸かつおをかけると、かつおの香りが広がりおいしくいただけます。
本格的な出汁も、手軽な白だしを使ったものもぜひ試してみてください。
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